“読者が取り上げている問題が、何世紀にもわたって思想家が思索を重ねているにもかかわらず、いまだに意見の一致をみない問題だとしよう。その場合には、単に質問に答えるだけでは、読み手はシントピカル読書の務めを完全に果たしたとは言えない。この種の問題の解決は、そう簡単に得られるものではない。かりに真実というものがあるとすれば、それは、十分な証拠と理由に裏付けられた、対立意見の衝突の中に求められるのではないだろうか。
したがって、かりに真実―つまり、問題の解決―があるとすれば、それは、命題や主張ではなく、秩序だった論考の中にあるのである。真実をつかみ、ほかの人にもこれを示すには、ただ質問をし、答えるだけでは十分ではない。ある順序で質問するのはなぜか、また、質問に対して各著者がそれぞれ違った答えをしているのはなぜか、その理由を述べなくてはならない。さらに、その出典を明らかに示すことができなくてはならない。これらの作業をすべて終えて、論考を分析したと言える。そのときはじめて、問題を理解したと言えるのである。”

本を読む本 / M.J.アドラー、C.V.ドーレン
“僕は森の中核へと足を踏み入れていく。僕はうつろな人間なのだ。僕は実体を食い破っていく空白なんだ。だからこそもう、そこには恐れなくちゃならないものはないんだ。なにひとつ。
そして僕は森の中核に足を踏み入れていく。”

海辺のカフカ / 村上春樹
“「明日は朝から車を運転していただけますでしょうか?」
「いいけど、どこに行くんだい?」
「それはナカタにもわかりません。乗ってから考えます」
「信じてくれないかもしれないけど」と青年は言った。「きっとそういう返事が返ってくるだろうとわかっていたよ」”

海辺のカフカ / 村上春樹
“「誰もが恋をすることによって、自分自身の欠けた一部を探しているものだからさ。だから恋をしている相手について考えると、多少の差こそあれ、いつも哀しい気持ちになる。ずっと昔に失われてしまった懐かしい部屋に足を踏み入れたような気持ちになる。当然のことだ。そういう気持ちは君が発明したわけじゃない。だから特許の申請なんかはしないほうがいいよ」”

海辺のカフカ / 村上春樹
“「しかしそれにもかかわらず僕は内心こう考えている。外殻と本質を逆に考えれば―つまり外殻を本質だと考え、本質を外殻だと考えるようにすれば―僕らの存在の意味みたいなものはひょっとしてもっとわかりやすくなるんじゃないかってね」”

海辺のカフカ / 村上春樹
“日本でも、戦前には、「祭政一致」などという政治綱領をかかげた政治家がいたが、社会のだいたいの骨ぐみは、聖俗分離ないしは聖に対する世俗の優位という態勢になっている。日本は、ひどく俗な国である。あるいは、実際的な国である。”

文明の生態史観 / 梅棹忠夫
“この「あたため」の現象も、その前の集中的な思索によって自分の目標がはっきりとかたちを整えたのち、それを実現するのに都合がよいように記憶の再構成メカニズムが自動的に働いているプロセスとみなすことができるかも知れない。”

問題解決の心理学 / 安西祐一郎
“将棋の羽生さんも将棋は絵だと言っていましたよ。自分に合う絵なら勝てるけど、調子の悪い絵は劣勢だから、自分にとっていい絵にしていこうとすると、やっぱり絵なんだね。漫才でも、頭の中に絵がない奴はだめ。言葉でやろうとしても面白くないんだ。自分の中で、面白い絵があればワーッとしゃべっていけるけど、絵がなくて言葉が優先すると、何をやっていいかわからないことが多いね。”

達人に訊け! / ビートたけし
“売れてよかったと思う。他人の成功を素直に喜ぶことができる。それがどれだけ幸せなことか、この歳になってよくわかる。若い頃はいつもイライラしていて、とてもじゃないけど、他人の成功を喜ぶなんて気にはなれなかった。”

全思考 / 北野武
“いちばん仕事をしていた時期は、1年で27億円くらい稼いだこともある。”

全思考 / 北野武
“神様はいるのかいないのかと考えたり、議論すること自体が、すでに神という存在を前提にしている。神という以外の言葉はないのかと思う。だけどそういう言葉はないわけで、神という言葉が頭の中にある限り完全に信じてはいなくても、心のどこかにそういう存在が絶対にないとは限らないという思いが残るのだ。”

全思考 / 北野武
“このようなアナロジーのもとに、わたしたちはコンニャク情報というものの存在をかんがえることができる。つまり、ただ感覚器官、脳神経系を通過するだけで、とくに行動上のメリットをともなわない情報のことである。このような情報の存在をかんがえることによって、情報の概念は大はばに拡張されるであろう。情報には、なんの利益ももたらさないし、プラグマティックな意味ももたないものもたくさん存在するのである。”

情報の文明学 / 梅棹忠夫
“世のなかには、行動上の利益をもたらす情報も存在するが、なかには、そのような利益を、ほとんど、あるいはまったくもたらさないような情報も存在するのである。情報を、つねにプラグマティックな意味をもつもの、とかんがえるのはまちがいであろう。”

情報の文明学 / 梅棹忠夫
“デザインは情報である。”

情報の文明学 / 梅棹忠夫
“情報化がすすんでいるとは、その商品の代価が、じつはその商品がはこんでいる情報に対して支はらわれているという意味である。物そのものの使用価値はもちろん存在するが、そのデザイン、色彩、つかいごこちなどが決定的な要素となっている。”

情報の文明学 / 梅棹忠夫